ヨコハマ買い出し紀行を読み解く。
 

えらそうですが、そんな大げさなことは言ってません。
もっと深く読める人はほかにもいっぱいいらっしゃいます。



第0話 ヨコハマ買い出し紀行

パイロット版というか、読み切りとして作られたヨコハマ買出し紀行そのもの。

実はヨコハマ買い出し紀行の世界(観)はこの第0話で描ききられており、
この後読者は本連載がいつ途切れても、これのおかげで完全な世界観が得られるという実にお得なお話。
この話の後はいわば世界を少しずつ肉付けしていく付けたしというわけです。

では、まっさらな状態で読み進めていったとして、
ヨコハマ世界を見ていきましょう。

サングラスの女性。これからお出かけのようだ。

「木ようまで… 買いだしです」

まず、この掲示から、この世界は、(本格的な)お買い物には泊りがけでいく世界であることがわかる。
今の交通機関が発達し、自動車があふれ、お店といったらコンビニや地方の大規模スーパーがある
現代とは舞台が違う話であることがわかる。
もっとも買い出しに行く割には籠も無いバイク(スクーター)でリュックも持たずに行くんですけどね。

また、張り紙一枚で数日店を開けられるほど、割とのんびりとしたノリであることが
類推できるかもしれない。

バイクに乗るときにヘルメットをしていません。 すでに現在の道交法がなくなってる世界のようです。

畑は割と整備されてるようです。農業を営んでいる人達がいるということやね。

ガソリンスタンド。

お客がやってきても、飛び出して出迎えることは無い。
そしてそのスタンドの荒れ具合。
ガラスはひび割れ、待合室の壁もぼろぼろ。
しかし営業はしているようだ。
ということは、この荒れた状態をそのまま放ってあるということだ。

おじさん登場。アルファさんについで最初の登場人物。そして後々の重要人物。

お客なんて一週間ぶりというせりふから、この世界の特殊性がまた浮かび上がる。

いまどきどんな田舎のガソリンスタンドでも、お客が一週間来ないというところはあるまい。
しかも(相対的に)ヨコハマの近くでだよ?
ここから、この世界ではかなり人口が減ってしまっていることが予想できる。

そしておじさんとの会話。この女性はアルファさんと言う名前であることがわかる。
西の岬のコーヒーやさん。割とファンが多いそうだ。

でもめったにお客は来ないらしい。立地条件悪るし?

買い出しにヨコハマまで。 そりゃと遠いわ。
→つまり何か本格的な買出しをするには遠出をする必要がある。
 さらにヨコハマがそう簡単にはいけないほど遠くなってしまっているということだ。

そして ガス代はいいよ。サービスだ。
というところに、のんきさと、人の良さが表れている。
ヨコハマ世界では何が何でも金が第一主義ではないようだ。

道が悪い、いきなり道がなくなる → なんか世界はただごとではなさそうだぞ。

ガス代の代わりにコーヒーごちになるから。 この世界、物々交換も有りか?

そしておじさんのさりげないが、意外なセリフ。
あんたロボットだって?
普通ここで驚く。ここまでアルファさんはまったく人間として描かれてるからだ。(ちなみにこの後も)

普通ロボットというと、金属製で人間とは違った外観を持ち、すごい力とかを持った存在として
えがかれるもんだが。

ちなみに同様にほとんど人間に近い存在として描かれたロボットは究極超人RのR・田中一郎くんだろう。
次点はおそらくTNGのデータ少佐あたりであろう。もっともこの二者は「アンドロイド」と呼ばれてるが。

ヨコハマの世界に戻るが、この世界ではロボットは外見も、内面も完全に人間とコンパチで、
回りもその存在を特別視していないようだ。
鉄腕アトムにあるような、人間の召使で、ロボットの人権や、差別に悩んだりとか、
人造人間キカイダーのように自分の不完全さに悩んだりとか、
アシモフの3原則に縛らるようなそんな存在ではないようだ。
とりあえず、中身は金属やオイルでできているメカなのか、
有機物からできている生体メカなのかはわからないけど。

作者は「ロボット」という言葉の持つイメージと、実際のアルファさんの姿、あり様のギャップを利用している。
アンドロイドとかロボットという言葉のもつ(SF用語としての)古さ。
人間に仕えるもの、意思を持たないものといった意味を持つことばを
全く人間と代わらないアルファさんに用いることによって、すでにこの時代、
その(イメージ)ギャップは克服されてるんだよといっているのかもしれない。

この時代の人が、ロボットに対して特に特別な感情を抱いていないと言うのは、
「体取り替えます?」「お互い神様がくれたものはまっとうしなきゃな」という
おじさんの悟りきった言葉にも表れている。

「何年か前、私のオーナーは…」
まあ、前の節でああいったものの、ロボットさんにはオーナーと言う、
そのロボットの所有者、ご主人様とも言うべき存在があるらしい。

「いくらでもまってられるからね」
どうやら、ロボットは人間と比べて、長い寿命を持っているようだ。
少なくとも自然死はしないみたいだけど。

そしていきなり急ブレーキをかけるアルファさん。
なぜ止まったか。
道が水没している。
「年々海が上がってくるみたい」
つまりこの世界は異常気象によって、海面が現在よりも上がっている
そして、アルファさんのせりふより、現在もあがりつつある世界であることがわかる。

もし、今現在、現実に海面上昇があったとすると、人類は全力で持ってそれに対抗しようとするであろう。
しかし、この世界ではすでにそういった努力は放棄されているようだ。(いわゆる放置プレー?)
それだけの人員がいないのか、すでにあきらめきっているのかは知らないが。

結局山道へ回避。
後ろにある方向指示版より、ここが三浦半島あたりであることがわかる。
たしかにこの地理なら一番近い都会は横浜であろう。
もっともそのヨコハマも水没しているらしいが。

そしてヨコハマへ。
ランドマークタワーとか、現在の建物が残っていることから、
舞台設定としては、現在の日本を下敷きにした、未来の世界であることがわかる。

街の雰囲気はなんとなく(第二次世界大戦の)終戦直後の市場のようである。
ここ大都会ヨコハマには結構人でもあってにぎわっているようだ。
活気もあるみたい。

輸入雑貨やさん。
コーヒー豆を売っているらしい。

ここで注目してもらいたいのは45ACPありますという看板。
45ACPとはなにか。 これは拳銃の弾である。(コルトカバメントなどの弾)
つまりこの世界では拳銃の弾が必要なほど物騒な世界でもあるということがわかる。
平和なだけな世界ではない。現実には闇の部分も存在する世界だということだ。

ちなみに大福帳がぶら下がっている。
つまりこの世界は複式簿記も廃れてしまったようだ。
経済活動レベルがその程度の大雑把さで済むと言うことかもしれない。

コーヒー豆を買う。コーヒー屋(輸入雑貨屋)のモヒカン兄ちゃん、アルファさんのファンか?
洋服や、香辛料もお買い物。
楽しそうなお買いもの風景ではある。
ただ、お金を使いすぎて、ホテルには泊まれなくなってしまったようだ。

結局野宿するアルファさん。拳銃は売っていてもそこまで切羽つまって危険のある世界ではないのか。

「数年前の大都市ヨコハマが嘘のよう。」
「ここ数年でずいぶん変わったわ。」
実はのんびりしてるように見える世界も、実は大激動の真っ最中(復興中?)らしい。

でも、時代の黄昏が といっているところを見ると、完全にもとの姿には戻れず、
緩やかに滅んでいくのが定めのような言い方をしている。
そして、アルファさんはそれを傍観者のように観察していくんだと。

そしてお帰りです。リュックはどこかに積んでいたのか、横浜で買ったのか?

そして帰ってくると、オーナーからの伝言が

アルファへ 元気なようで安心しました。

オーナーさんは久々のはずなのに、木曜まで待てないほど忙しい人らしい。
普通なら言いたいことがたくさんあると思うが、ごく簡潔な文章で用件をつたえるという、
割とさばけた人、悟ったお方と見た。

さて、これだけのお話で
ヨコハマの世界がどのような世界であるかを読み解くに十分なほど
ヒントがばら撒かれてました。

どうやらこの世界は数年前に異常気象か何かにより、海面上昇がおこり、
くわえて何らかの大変動があったらしく、現在の物質文明は
レベルが下がってしまったようである。しかも人口も激減したらしく
完全には元のレベルには戻らないようだ。
それと同時に、経済のレベルも下がり、人々はのんびりと、でもたくましく生きているようだ。
この世界には、人間と全く変わらないロボットが存在し、
(現時点でアルファさん以外のロボットの存在は明示的ではないが)
(=それだけのものを作り出せるテクノロジーが存在していたことをしめす)
人々にまぎれて普通に生活をしているようだ。

そして物語はアルファさんを中心に、彼女と一緒にこの黄昏の時代を見ていくことになるのだ。


第一話 鋼の香る夜

どうやら読み切りの「ヨコハマ買い出し紀行」が好評だったらしく、連載第一話目。

前作で、オーナーの伝言が扉にはっつけてあったことから話を引っ張ります。

俯瞰図。カフェアルファのある位置が分かります。遠くには水没した街。
しかし、こんな周りに何も無いところに… (w

窓際でコーヒーを飲むアルファさん。
拳銃を触っています。
オーナーの残していったメモ(前作の最後に扉にはっつけてあったもの)を大切そうにフレームに入れてます。

おじさん登場。なんか渋いジャンパー着てますよ。
へぇ、アルファさんも鉄砲持ちかよ。
この世界、護身用に鉄砲(この言い方もレトロっぽくていい)を持っている人がいるようです。
まあすべての人が持っていると言うわけではなくて、
一部のややハイソ組の持ち物のようですけど。
アルファさんの鉄砲はオーナーからのプレゼント。(SIGっぽいんだけど現実の銃じゃないかも)
おそらくはオーナーさんの持ち物だったんだろう。
オーナーがどういう旅に出てるのかは分からないが、一人残していく
アルファさんの身を案じて、渡していったものなんだろう。
でもアルファさんにとってみると武器ではなくて、オーナーからの贈り物。
オーナーさんを思い出す宝物と言ったところか。
いつもなでなでしてたのはオーナーか、アルファさんか?

夕日を眺めるおじさん。
展望台付き喫茶店。コーヒー飲みながら、ゆっくりと日の入りを眺めてると気分いいだろうなぁ。

なんか雰囲気いいので、今日だけの特別で月琴を持ち出すアルファさん。
オーナーの趣味だそうだ。
そこへやってくるタカヒロ。
おじさん、さりげなく「ちっ」とか言ってます。
せっかくのアルファさんとの特別な時間に割り込んできたんだから、まあそう思ってもしょうがないか。(w
おじさんのことをじいちゃんと言っているところから、お孫さんか。
そしてアルファさんの弾き語り。
月琴は割と素朴な楽器だそうです。

その日の閉店時間はちょっとだけおそくなりました。

こういう余韻を感じさせるセリフが実にヨコハマ的です。


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